パリ五輪の開幕式よりも一足早く、男女のサッカー競技が始まっています。テレビで連日、その報道が行われていますが、嘆かわしいのはNHKが「予選リーグ」という誤った用語を堂々と放送などで使っていることです。たとえばこんな具合。これ以外にも「決勝トーナメント」を依然として平然と使っているメディアが多く、その見識のなさには呆れ果てるばかりです。
決勝トーメントはない
2002年のワールドカップは、多くの人々に「サッカー文化」に触れる貴重な機会を提供しました。しかし、この大会を通じて、「決勝トーナメント」という誤った表記が浸透してしまったことが問題となりました。
その当時のFIFAの正式な表現では、大会全体が「tournament」とされ、いわゆる「決勝トーナメント」は「Second Round」にあたります。また、「予選を突破する」という表現も、地域予選を指すものであり、本大会のグループステージを指すものではありません。
日本サッカー史に残る名記者、賀川浩さんはこの誤用について1998年から幾度となく指摘されてきました。詳しくは「決勝トーナメントはない」で賀川さんが詳述されているとおりです。
サッカー用語の進化と標準化
ただ、2002年のワールドカップから20年以上が経過し、サッカー用語の使用や認識にも変化が見られます。現在のFIFAの公式用語と日本サッカー協会(JFA)のガイドラインを踏まえて、現在の「世界の常識」はいかなるものなのか、調べてみました。
FIFAの現在の用語使用
FIFAは現在、ワールドカップの構造を以下のように表現しています[1]:
- グループステージ(Group Stage):32チームが8グループに分かれて行うリーグ戦
- ノックアウトステージ(Knockout Stage):以下のステージを含む
- ラウンド・オブ・16(Round of 16)
- 準々決勝(Quarter-finals)
- 準決勝(Semi-finals)
- 3位決定戦(Play-off for third place)
- 決勝(Final)
FIFAは「トーナメント」という言葉を大会全体を指す際に使用し、ノックアウト方式の段階を特定する際には「Knockout Stage」という表現を採用しています。
日本サッカー協会(JFA)のガイドライン
JFAは、FIFAの用語に準拠しつつ、日本語での正確な表現を推奨しています。JFAの公式サイトでは、以下のような用語使用が見られます[1]:
- 「FIFAワールドカップ」を正式名称として使用
- 「W杯」という略称の使用を避け、口語での「ワールドカップ」は許容
- 「決勝トーナメント」という表現は使用せず、「ノックアウトステージ」を採用
メディアと一般使用の現状
日本のメディアや一般のサッカーファンの間では、依然として「決勝トーナメント」という表現が使われることがありますが、公式報道や専門的な文脈では、FIFAやJFAのガイドラインに沿った用語使用が増えています。