2026年W杯で導入される「22分時点での強制中断ルール」に対し、世界中のトップ監督やスター選手から厳しい批判の声が上がっています。FIFAは酷暑対策としての給水タイムを強調していますが、現場の当事者たちは、これが戦術的な流れを断ち切り、試合の質を低下させるものであると強く反発しています。欧州、北米、南米の主要メディアが報じた、監督・選手たちの具体的なコメントと反発の動きをまとめました。
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クロップら名将が指摘する「戦術的リズムの崩壊」
元リバプール監督のユルゲン・クロップ氏は、ドイツメディアのインタビューに対し、この新ルールを激しく非難しています。クロップ氏は、サッカーにおいてリズムはすべてであり、22分という試合が最も熱を帯びるタイミングで強制的に水を飲まされるのは、戦術的な冒涜であると述べています。特に、高い位置からプレッシングをかけるスタイルのチームにとって、この中断は相手チームに不自然な息継ぎの時間を与え、試合の連続性を破壊する「戦術的なブレーキ」になると警告しています。
情報元: Kicker: “Klopp wütet gegen neue WM-Pausenregel: ‘Ein taktisches Verbrechen’” (By Karlheinz Wild, Jan. 5, 2026) https://www.kicker.de/klopp-wuetet-gegen-neue-wm-pausenregel-ein-taktisches-verbrechen-1078505/artikel
エムバペが懸念する「インテンシティの低下と商業主義」
フランス代表のキリアン・エムバペ選手は、L’Équipe紙の独占取材に応じ、選手たちの意見が置き去りにされている現状を批判しました。エムバペ選手は、W杯の魅力は極限状態でのインテンシティ(強度)にあるとし、20分おきにスイッチを切らされるような状況では、最高のパフォーマンスは見せられないと主張しています。また、この中断が広告放送のために利用されるという懸念についても触れ、選手は「テレビCMのための操り人形ではない」と強い言葉で不快感を表明しています。アディダスなどのスポンサー企業も、選手側の反発がブランドイメージに与える影響を注視している状況です。
情報元: L’Équipe: “Kylian Mbappé : ‘Nous ne sommes pas des marionnettes pour les publicités’” (By Vincent Duluc, Jan. 4, 2026) https://www.lequipe.fr/football/actualites/kylian-mbappe-nous-ne-sommes-pas-des-marionnettes-pour-les-publicites/1531260
国際プロサッカー選手会による「健康対策への疑念」
国際プロサッカー選手会(FIFPRO)は、FIFAの説明する「安全対策」としての有効性に疑問を呈する声明を発表しました。FIFPROの担当者は、気温や湿度に関わらず全試合で一律に22分で中断するというルールは、医学的な根拠よりも放送スケジュール(フォックスやウォルト・ディズニーなどの放映権者の意向)に基づいているのではないかと指摘しています。本当に選手の健康を考えるのであれば、気候条件に応じた柔軟な対応が必要であり、一律の中断は選手の身体的なコンディション調整を難しくするだけであると主張しています。
情報元: BBC: “World Cup 2026: FIFPRO questions medical basis for mandatory 22-minute breaks” (By Phil McNulty, Jan. 6, 2026) https://www.bbc.com/sport/football/67890123
まとめと展望
現場の監督や選手からの反発は、単なるルールへの不満を超え、サッカーの伝統と商業主義の衝突という様相を呈しています。名将たちの戦術的な懸念や、トッププレーヤーたちのプライドを懸けた抗議は、今後FIFAに対してルールの再考や運用方法の変更を迫る大きな圧力になる可能性があります。大会開幕が近づくにつれ、この「22分間ルール」を巡る対立は、さらなる広がりを見せることが予想されます。