審判の「聖域」は消滅するか?VAR拡大が示唆するサッカーの未来

  • 2026年1月31日
  • 2026年1月31日
  • MWC余話
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サッカーの競技規則を司るIFAB(国際サッカー評議会)が、2026年1月20日の会議でVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の適用範囲拡大に前向きな姿勢を示しました。フランスのスポーツ紙『レキップ』が報じたこのニュースは、単なるルール変更以上の、競技の本質的な変容を予感させます。

出典:L’Équipe (2026年1月21日付記事) 「L’IFAB favorable à l’élargissement du VAR sur les deuxièmes cartons jaunes et les corners」

1. 「退場」の重みと公平性の担保

今回、最も注目すべきは「2枚目のイエローカードによる退場」へのVAR介入です。

これまでのルールでは、一発退場のレッドカードはVAR対象でしたが、2枚目のイエローカードは対象外でした。しかし、試合の結果を左右する「数的不利」を招くという点では、両者の影響力に差はありません。IFABがこの矛盾の解消に動いたことは、試合の勝敗を「審判の瞬間的な誤認」に委ねないという、徹底した公平性へのシフトを意味します。

2. 「スピード」と「正確性」の妥協点

特筆すべきは、コーナーキックの誤判定への介入も提案されている点です。ただし、これには「即座に確認でき、再開を遅らせないこと」という条件がついています。

ここから分析できるのは、IFABが「正確さ」を求めつつも、サッカーの魅力である「試合のテンポ」を損なうことを極度に警戒しているという事実です。これは、AIによる自動判定技術の向上を背景に、将来的に「人間が映像を確認する時間」を極限まで削削ろうとする技術的進化の過渡期にあることを示唆しています。

3. 「ボディカメラ」がもたらす抑止力と透明性

審判員のボディカメラ着用への支持も表明されました。これは単なる判定精度の向上だけでなく、以下の2点において競技環境を劇的に変える可能性があります。

  • 選手・監督の振る舞いの是正: 審判に対する不適切な抗議や接触を記録することで、ピッチ上の規律を強制的に高める「監視」の役割を果たします。
  • 視聴者体験の変革: 将来的には、審判の視点(ファーストパーソン・ビュー)が放送コンテンツとして活用され、スポーツビジネスとしての新たな価値を生む可能性も秘めています。

結論:2月28日の総会が分岐点に

IFABは2026年2月28日の年次総会で、これらの措置を正式に議論する予定です。

もしこれらが承認されれば、サッカーは「人間味のある誤審」を許容するスポーツから、テクノロジーによって「正解」を導き出すデジタルな競技へと、また一歩近づくことになります。審判の権威は、ピッチ上の「独裁者」から、システムの「運用者」へと変化していくのかもしれません。

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