サウジアラビアは、2034年に予定されているFIFAワールドカップの単独開催をきっかけに、スポーツ分野を国家経済の重要な柱とする動きを進めています。石油収入に大きく依存してきたこれまでの経済構造を転換するため、「ビジョン2030」に沿って観光やエンタメと並び、スポーツも重点産業として位置づけられています。
スポーツを起点とする社会構造の転換
サウジアラビアは、これまでの保守的な国家イメージを刷新し、海外からの投資を呼び込むために、国際スポーツイベントの開催を有効な手段と見なしています。2034年のワールドカップ開催に向けて、スタジアムやスマートシティの開発など、大規模なインフラ整備が計画されています。
関係者によりますと、これらの事業は単なる施設整備にとどまらず、デジタル技術やAIを活用した社会実装の場としても位置づけられているということです。
国際連携と技術導入による市場活性化
日本との連携も注目されています。サウジの老舗クラブであるアル・シャバブFCの関係者は、日本のスポンサーシップを軸とした収益モデルや、地域に根ざしたクラブ経営の在り方に高い関心を示しています。報道によりますと、同クラブはこうした運営ノウハウを学び、自国のクラブ運営に応用したい意向だということです。
また、東京のIT企業と同クラブが締結した協力覚書により、スタジアムでの飲食デリバリーシステムの導入が進められており、観戦体験の向上が期待されています。
市場規模の成長見通しとリスク要因
サウジアラビアの政府系ファンドが手がけるSURJスポーツインベストメントの報告書(2024年12月発表)によりますと、国内のスポーツ市場は2030年までにGDPの1.5%を占めるまでに成長し、金額ベースでは165億ドルに達する見込みです(出典:SURJ Sports Investment Report 2024)。これは2016年時点の20億ドルからおよそ8倍の規模拡大となります。
一方で、潤沢なオイルマネーを背景にした海外選手の獲得や、欧米スポーツ団体への資本参加に対しては、「スポーツ・ウォッシング」との批判も根強く、国際的な懸念が指摘されています。
今後の展望と注目点
サウジアラビアでは、2027年にAFCアジアカップ、2029年には冬季アジア大会の開催が予定されており、これらの国際大会も2034年のW杯と並行してインフラ投資や経済効果を試す重要な機会となります。今後、日本をはじめとする他国との連携がどのように進展していくのか、引き続き注目が集まります。