欧州サッカーのフィールドで、日本人選手が歴史に残る輝きを放った数々のシーンがありました。そのなかで、私が特に強く胸を打たれた3つの試合があります。1990年代末から21世紀初頭、そしてつい近年まで、異なる時代の舞台で紡がれたこれらの瞬間は、今なお鮮明に記憶に刻み込まれています。
1998年9月13日 中田英寿 セリエAデビュー戦(ペルージャ vs ユヴェントス)
イタリア・セリエAという当時「世界最高峰」と謳われたリーグに、日本人が挑むこと自体が驚きだった時代――その扉をこじ開けたのが中田英寿でした。ペルージャで迎えたデビュー戦の相手は、名門中の名門ユヴェントス。その強豪を相手に、中田は2ゴールという衝撃的な活躍でサッカー界を震撼させました。
あの一戦は、日本サッカー界にとって「欧州で通用する」という現実を示した歴史的瞬間。まだ未知だった欧州挑戦に光を射し、後に続く日本人選手たちに希望と自信を与えた、まさにエポックメイキングな試合でした。
2006年11月21日 中村俊輔 UEFAチャンピオンズリーグ(セルティック vs マンチェスター・ユナイテッド)
スコットランドの名門セルティックで数々の伝説を積み上げた中村俊輔。その輝かしい記録の中でも、欧州最高峰の舞台であるチャンピオンズリーグで対戦したマンチェスター・ユナイテッド戦は、世界中が息を呑んだ名場面となりました。
正面FKから放たれた一撃は、まるで芸術品のようなカーブを描き、名手ファン・デル・サールをもってしても届かぬゴールへと吸い込まれる。あの一瞬、世界は「ナカムラ」という名を改めて心に刻みました。これは、フィジカルだけでない、緻密な技術と確固たる精神で欧州を魅了する日本人選手の可能性を示す象徴的なゴールでした。
2023年1月29日 三笘薫 FAカップ4回戦(ブライトン vs リバプール)
そして、新たな時代を切り拓く力強い風となったのが三笘薫です。イングランドの伝統が息づくFAカップで、近年欧州を席巻したリバプールを相手に見せたあのラストミニッツのゴール。ペナルティエリア内で繰り出した巧みなタッチと、ゴールマウスへ華麗に流し込む一瞬の閃きは、まさに世界トップクラスの技術と度胸を体現していました。
この得点には、中田英寿が切り開いた欧州進出の扉や、中村俊輔が示した技術での可能性が凝縮されています。新世代の日本人選手が世界を震撼させる「今」がそこにありました。
結び
中田英寿が扉を開き、中村俊輔がその価値を確立し、そして三笘薫が新時代の可能性を証明した――これら3つの試合は異なる時代を象徴する光景であり、その積み重ねの上に現在の日本サッカーがあります。欧州最高峰の舞台に挑み、成功を掴み取った瞬間は、私たちの心に鮮烈な感動を与え続け、これからも語り継がれていくに違いありません。