2026年W杯のキックオフ時刻を巡る波紋:欧州メディアが懸念する「深夜の祭典」と経済的打撃

2026年FIFAワールドカップの全104試合のスケジュールが公表され、欧州の放送業界やファンの間で大きな波紋が広がっています。北米3か国の広大な時差により、欧州での放送は深夜から早朝に及ぶケースが続出しており、直近24時間の報道では、特にドイツの公共放送が直面する広告収入の減少や、選手の健康を優先した「夜間開催」への支持など、多角的な議論が展開されています。


深夜から早朝に及ぶキックオフ:ファンの睡眠と放送枠の葛藤

最新のスケジュール公表を受け、欧州メディアは「不眠の1か月」への警戒を強めています。ドイツのスポーツメディア「ran」や「Focus Online」が報じたところによると、全試合の半数以上がドイツ時間(中央欧州夏時間)の深夜0時以降に開始され、最も遅い試合は午前6時にキックオフされます。当初、放送局側は「18時、21時、0時、3時」の4つの時間枠に収まると想定していましたが、実際には18時から翌朝6時まで、ほぼ1時間おきに試合が詰め込まれる変則的なスケジュールとなりました。
原文リンク:ran (German)

ドイツ公共放送の苦悩:広告収入を阻む「20時の壁」

ドイツの公共放送であるARDとZDFにとって、今回のスケジュールは深刻な経済的打撃を意味しています。ドイツの放送法では、公共放送による広告放送は平日・土曜の20時までに制限されています。例えば、ドイツ代表対コートジボワール代表の試合は22時開始となっており、高視聴率が期待されるカードであるにもかかわらず、放送局はCM枠を販売できず、スポンサー契約のみに頼らざるを得ない状況です。巨額の放映権料を支払った放送局にとって、この時間設定は「FIFAに裏切られた」との声も上がるほどの想定外の事態となっています。
原文リンク:Focus Online (German)

選手ファーストか、市場ファーストか:酷暑対策による「夜戦」の推奨

一方で、試合時間の後ろ倒しを肯定的に捉える意見も存在します。イングランド代表のトーマス・トゥヘル監督は、北米の酷暑の中でのプレーを避けるため、キックオフを遅らせるFIFAの方針を支持する姿勢を示しました。「午後2時にシャーロットでジョギングをすれば、なぜ夜にプレーすべきか理解できる」と述べ、ファンの利便性よりも選手の安全とパフォーマンスを優先すべきだと主張しています。しかし、これは欧州の視聴者にとってはさらなる深夜帯へのシフトを意味し、観客と選手の利益が真っ向から対立する構図となっています。
原文リンク:ZDFheute (German)

欧州各国の反応:フランス・スペインでも懸念広がる

フランスの「L’Équipe」やスペインの「RTVE」も、自国代表の試合時間に注目しています。スペイン代表のグループステージ第3戦、対ウルグアイ戦は現地時間の夜間に設定されており、スペイン国内では午前3時からの放送となります。フランスでも主要な試合が21時以降、あるいは深夜に設定されており、1994年アメリカ大会以来の「時差の壁」が、放送権を持つM6やフランス・テレヴィジオンの戦略に大きな影響を及ぼすと予測されています。
原文リンク:RTVE (Spanish) / 90min.com (French)


まとめと展望

2026年大会のスケジュール論争は、現代サッカーが抱える「巨大化する商業主義」と「競技の公平性・安全性」の矛盾を浮き彫りにしています。FIFAは欧州市場の放映権収入を維持しつつ、北米の厳しい気候条件に対応するという困難な舵取りを迫られています。今後は、リアルタイム視聴が困難な欧州ファン向けに、各放送局がデジタルプラットフォームでの見逃し配信や、朝の時間帯でのダイジェスト番組をいかに充実させるかが、大会の盛り上がりを左右する重要なポイントになりそうです。

最新情報をチェックしよう!