W杯で最も厳しい地区予選のひとつが南米です。
CONMEBOL(南米サッカー連盟)の加盟協会はわずかに10。昔は2組に分けて予選を行っていたのですが、組分けによる運不運に不満が出たのか、今は1組だけ。全加盟協会総当り、全18試合を戦う長丁場のリーグ戦で本大会出場チームが決められています。公平を期すためにホーム&アウェイで行われているのですが、地理的条件っていうのがなかなかの曲者。まるで違う環境での試合は慣れない者にとっては大きな障害です。
この地理的条件で南米予選でよく話題になるのが「標高」。南米大陸を北から南まで貫くアンデス山脈に位置する国で行われる試合会場の標高がとんでもなく高いため、そこを訪れる国は普通にプレーできないと問題になるのです。
首都の標高が高い国のワールドランキングを作ると、上位3つを南米の国が占めます。1位はボリビアの首都ラパス。標高は3640mで、ほぼ富士山と同じ高さです。2位はエクアドルの首都キトで標高は2850m。日本で言えば中央アルプスあたりのところに位置しています。3位はコロンビアの首都ボコタで標高2640m。
コロンビアはボコタでは試合を行っていませんが、ラパスとキトはW杯予選の試合会場として常用されています。
高地は酸素濃度が低いため少し動いただけで息が上がってしまいます。平地と比べるとパフォーマンスは大幅に低下し、慣れていない選手にとっては大変な苦行になるのです。おまけに気圧が低いためにボールのスピードが速くなる。いつもとは勝手が違うだけに凡ミスも多く出ることになります。慣れたら平気かという必ずしもそうではないようで、「ボリビア人のサポーターが酸素吸入をされながら担架で運ばれるのを見た」なんていう目撃談も報告されています。
南米3強と言われるブラジル、アルゼンチン、ウルグアイもこの高地では苦戦しています。過去5回のW杯予選における3強のラパス、キトでの成績は以下の通り。
やはりラパスではブラジル、アルゼンチンと言えども勝利を手にすることは容易ではないようです。特にアルゼンチンにとってラパスは鬼門。2010年W杯予選における1-6の大敗以来勝てていませんでしたが、やっと2020年10月14日に行われた2022年W杯予選で2-1の逆転勝利をあげています。
高地での試合は健康面で問題があるとして、FIFAが2007年5月、標高2500mを越える高地での国際試合禁止を決定したことがありました。抗議が殺到し、標高3000mに限界を変更、3640mのラパスでの試合は南米各協会が認めれば開催可能ともしました。2007年7月に南米各協会は全会一致でラパスでの開催を承認。以後現在に至るまでボリビアはラパスで戦っています。
気温が40度を越えるような場所で試合が行われることも珍しくない南米。「高度が問題なら温度はどうなんだ。」といった批判が支持されたのかもしれません。
でも、選手は辛いですよね。